ネコマタというと「猫が長く生きたことにより妖怪となり尻尾が二つの分かれる」
そんなイメージを持つだろう。
しかし、この二又の尻尾のイメージは最初はなかったのだ。
ネコマタの語源
ネコマタは古い妖怪である。その語源ははっきりとはわからないものの二つの有力な説がある。古語である「ネコマ」が語源説
例えば「伊呂波字類抄」(1180)において猫の訓として「子コマ(ねこま)」がある。
これに複数形としてタがつき「ネコマタ」となったと考えられる。
猱(また)という字を由来とする説(猱は猿という意味)
日野巌(1898~1985)は猱とは山中を自在に生きる猿や猫を指す字であり、それが自在とともに使われなくなり「ネコマタ」の言葉のみが残ったという。
ネコマタの登場
ネコマタが最初に登場するのは藤原定家の「明月記」だ。当時南都に猫胯(ネコマタ)という獣出て来。一夜にして人七八人噉ふ。(中略)目は猫の如く其の体犬の長さ如しとここではまだネコマタに二又の尻尾 はない。
鎌倉時代の「徒然草」や時代は進み江戸時代前期「本朝食鑑」においても「ネコマタ」という言葉は出てくるが猫に似た人を喰う化けものとだけのイメージである。
しかし十八世紀以降になると二又のネコマタが登場する。(大和怪異紀、安斎随筆等)
その要因として考えられるのは玉藻の前という妖怪の影響である。
現代では玉藻の前は九尾の妖狐として考えられるがもともとは「2尾の狐」である。(神明記)
1653年の「玉藻の前草子」においても
尾二つ有るべし。との記述がある。しかし江戸時代中国から妲己のような物語が輸入され玉藻の前は九尾の狐になる。そしてちょうどそのころネコマタは二つの尻尾をもつようになる。この二つの尻尾という要素が玉藻の前からネコマタに移っていったと考えられるのだ。